よそ行きの腕時計

リモートワークの期間があまりにも長くなって、とっくに気を抜いている。

 

起き抜けにPCの前に座ればそのまま業務開始、一日中Tシャツに短パンで過ごす。お昼休みはごはんを買いにコンビニまで。厄介なことがひとつ。住んでいるのが割と栄えているところで、おしゃれに着飾った若者やパリッとしたビジネスの人たちでいつも溢れている。

 

こちらは部屋着丸出しのTシャツ短パン姿。着替えればいい話ではあるけれども、せっかく家にいてノーストレスで仕事ができる環境であるというのに、たかがお昼休みのためだけにちゃんとしたくはない。

 

左腕に時計をつける。蛍光イエローの派手な時計。あきらかによそ行きである。本当に部屋着のまま出てきた人間であれば、こんな時計は身につけない。そう、僕はこの時計を通じて「あえてラフな格好をしているんですよ」というアピールをしている。こんな時計をしているやつが部屋着で出てくるわけがないのだから、きっと何か意図がある。そう思ってもらう。派手な時計さえしていれば、おしゃれめな街でも部屋着でなんとかなる。

 

実際は多分なんともなっていないのだけど、それは重要ではない。外に出るその瞬間だけ「なんとかなる」と思い込めれば、出ちゃった後はもうそのテイで動くしかないから。今日のお昼も派手な時計に勇気をもらって、ドアを開ける。